レジェンド内藤正裕先生の「咬合調整の真髄」を受講して
記事は年末に書いていたのに投稿が滞っておりました、、、
11月30日は当院の忘年会を行いました。当院のスタッフは子育て世代の方も多く、なかなか心ゆくままに外でお酒を飲む機会の多くはないと思われるのでこの会がその一助となれば幸いです。仕事中では言えそうで言えないことも色々お話しし、大いに盛り上がり、夜遅くまで楽しみました。スタッフの皆様はここまでありがとうございました。
その中で次の日12月1日は朝しっかり起床してセミナーに行って参りました。今回は内藤正裕先生の「咬合調整の真髄」に参加いたしました。内藤先生は以前よりブログにてお話しした本多正明先生、山崎長郎先生と共に日本臨床歯科学会(SJCD)を創設された先生であり、くれない塾という歯科医師の勉強の場を開催されて45年にもなり現在の日本の歯科医療に多大な影響を与えた先生です。もうじき臨床からは引退を検討されているようで現役としては最後の大きな講演とのことでした。ひとつの伝説の終わりを感じます。内藤先生は55年という半世紀を超える臨床歴があり、他の誰も見ないであろう長期症例をご自身で見られています。その長い歴史で歯科がどのように変わり、その中で見出された見解などをご講演されました。私の中で特に強く心に残った概念がありました。「全運動軸」という概念です。
これは私の母校の東京医科歯科大学(現在の東京科学大学)の当院に勤務している大石先生が所属している咬合機能健康科学分野という講座(当時は第二補綴学)の石原寿郎先生という方が考案された概念です。ちなみに当院の院長も医科歯科の大学、大学院を卒業後に数年間専攻生(大学院研究生)として所属しておりました。石原先生はかつて東京医科歯科大学の学長を務められていましたが学生運動の際に自決をされました。
その後第二補綴学の先生方で研究が進められましたが具体的な臨床応用が難しく概念として現在では「知る歯科医師ぞ知る」状況になりました。もちろん大学の講義でもほとんど扱われず(先生の雑談程度)、恥ずかしいながら私も医科歯科を卒業していながら内藤先生のお話を伺うまであまり知りませんでした。
幸運なことに私の大学研修医時代からずっとお世話になっている外勤先では第二補綴学を退官された先生が非常勤で勤務されており、当時の研究に携わっていた先生方もいらっしゃり、「全運動軸」の研究がどこまで進みどこで行き詰まってしまったのかを伺うことができました。
咬み合わせを考える際に長らくアメリカから「ナソロジー」という考え方が入ってきて広く浸透していたそうです。しかしその方式で実際臨床では支障が多く、良い治療成績を出せてなかったことがあり、新たに考案された概念です。
顎を動かすとき、顎は回転、前後、側方と3次元的に複雑に動きます。ある意味数学的な発想で、それの動きを単純化して認識するためにどうしたら良いか、ということを研究されていました。「全運動軸」は下顎骨の顎関節付近のある点(人によって細かい位置は異なる、固有のもの)を中心に見るとその顎の動きが回転と移動(前後)とだけに分けて解釈できる。その動きを咬合器を用いて再現してして補綴物を作成すれば従来よりもバランスの取れたものが出来上がるというものです。
しかしこの点の求め方がそれなり数学的な作業が必要で非常に煩雑、そしてその点がわかっても咬合器で再現がかなり難しいなどの臨床としてあまり現実的でないところからそこからはあまり前へ進まなくなってしまいました。
内藤先生も臨床的に何かいい手段がないかを長年に渡り考えられたそうですが、とうとうこれといった方法が見つけられないことが大きな心残りであるとのことでした。
この度は年明けに咬合の世界的権威である本多正明先生のセミナーに参加できることとなりましたが、事前に咬合の深い歴史に触れることができ、とてもよかったと思います。それを知って学ぶのか知らずに学ぶのかでセミナー受講した際の解釈の視野が大きく変わったかと思います。
今後とも精進していきたく思います。
斉藤デンタルオフィス
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