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「咬合・補綴治療計画セミナー」の第三回目を受けて

副院長の斉藤祐紀です。

3/21.22はお休みをいただきありがとうございました。2日間に及び通院される方々には大変ご迷惑をおかけしておりました。

今回は土日が本多正明先生の「咬合・補綴治療計画セミナー」の第三回目になのとその前日の金曜日は本多先生の診療を見学させていただきました。前回のセミナーが終了した時に真っ直ぐに本多先生のところへ向かい、お願いさせていただきました。世の中には「百聞は一見にしかず」、「論より証拠」といった言葉があるように、講習会で話を聞くだけでなく実際にそれが実践されている場を自分の目で見ることが真の理解につながると思います。実際に見学させていただくと講義でおっしゃるように臼歯における咬合接触と側方運動(顎を左右に動かす)で犬歯がしっかり機能するように足すべきところは足す、取るべきところは取る咬合付与をする処置を拝見するしたり、定期的に通われている患者さんのその咬合が維持されているかなどの確認をしっかり行われており、教わったことの臨床における実践を見て学ぶことができました。非常に重要な経験をさせていただきました。

また昼食もご一緒させていただき、咬合にまつわるお話を伺うことができました。以前のブログで内藤先生の講義に関するところで東京医科歯科大学の歴史と全運動軸についてお話しましたが、本多先生がご自身の咬合理論に至る経緯やその全運動軸に関する見解などをお話しいただきました。まるでNHKの番組のような歴史の瞬間、転換点を当事者から伺うような緊迫感がありました。実際、歯科業界の歴史という観点において考えれば「その時歴史が動いた」ような状況と言っても過言ではないと思います。という非常に貴重な内容でしたのでここでは多くは語らないこととします。笑

 

本多先生の著作にサインをいただきました。日本歯科界のレジェンドを診療を拝見し、サインをいただいてこの上ない貴重な経験をさせていただきました。

 

さて、第三回の内容ですが、今回からは欠損補綴のお話になります。「補綴」とは書いて字の如く補って綴ることであり、何か失われた際に補い、新たに作り出すことになります。被せ物なども補綴装置となりますが、ここでは歯を失った後にどうするかということを考えて行きます。歯を失った際の治療方法は大きく分けて

入れ歯(義歯)

ブリッジ

インプラント

となります。ただここで重要なのはまず歯を失った原因です。虫歯なのか歯周病なのか力なのか事故によるものなのか、そして治療が功を奏さず逆に悪影響を及ぼしてしまう医原性によるものか。それぞれの理由を見逃してしまうことによりあまり適応でない装置を用いることであまり長持ちしないケースの多々あります。(医原性の二次災害になりかねない)

原因をおおよそ掴めたところで現在の状態(欠損の程度)を確認、それも残った歯の状態(その歯が十分強いかそれともあまり長持ちしないか)を考慮してそれぞれ適切な補綴装置を設計します。また患者さんの希望(審美的要求、機能性の重視、経済面の考慮など)に沿っても計画します。

まず原則として補綴装置として最も優れているのはインプラントです。というのはある歯が抜歯になった後を考えた際、ブリッジは両隣の歯を削り繋げた被せ物を入れます。また、入れ歯も両隣の歯に金具を引っ掛けて空いた空間を埋めます。

ブリッジ、入れ歯に関しては無い歯を補うために両隣に負担を求めて機能させます。2本の歯で3本分の負担を担います。

ここで先ほどの原因追究です。もし歯を失った原因が純粋な虫歯、歯周病、はたまた事故であり、かつ咬合力や食いしばりなどの力のリスクが低ければブリッジや入れ歯でもある程度の予後が見込めますが、力も絡む状況で歯を失っていたとしたらそもそも3本で持たなかったものが2本で持つのでしょうか?長持ちする可能性はあまり高くないです。少なくともずっとマウスピースを用いる必要があると思われます。

一方でインプラントは顎骨にチタンを埋めてそこから人工の歯を立てていきますが、これは両隣の歯に負担をかけず、連結もないのでその歯だけの問題で捉えることが出来ます。ここまではメリットしかありませんが当然デメリットもあります。

手術を伴うため、外科的侵襲があり、全身疾患があるとその分だけ手術がリスクになり、場合によってはインプラントを諦める必要があります。また、正しい位置に入らないと不具合がないわけでもなく、かといって一度入れたものを抜去するのは容易ではないため、正確な技術が問われます。(当然全ての歯科治療において正確な技術は必須ですが)そして費用が高いこと、治療で待つ期間が長いことです。なので歯の欠損が多数にわたる場合には全てをインプラントにするということは現実的でない場合もあります。

またインプラントも優れた装置といえど適切な処置を行わないとトラブルに見舞われます。ロスト(インプラントが抜ける)、破折(被せが壊れる、ネジが折れるなどの多岐にわたる)などさまざまなものがあります。そこでインプラントの特性とそのトラブルの原因論などを学びました。インプラントの被せ物はねじ止め式とセメント固定式とがあり、それぞれの良し悪しは長きにわたり議論されています。このセミナー以外でもさまざまな日本歯周病学会や米国や欧州の歯周病学会などでも議論されています。インプラントは顎骨にチタンを埋め込み人工の歯を形成しますが補綴だけでなく歯周病絡みの勉強も非常に重要だと感じました。

 

 

 

セミナー後の夜に今話題の大阪万博の開園前の状況を見に行きました。急ピッチで作業が進められているようです。

 

ここまではインプラントの話でしたが上記の事情によりインプラントができないケースも存在します。インプラントができないからもう長期予後は見込めません、ではプロではありません。その代替案としては先述のブリッジや入れ歯も重要な選択肢となります。咬合力(咬む力)のリスクを吟味してブリッジでもなんとか持ち堪えられるか、持ち堪えるにしてもどの歯を支え(支台歯)に用いるか、その歯を何本用いるかなどをあらゆる欠損の形態を想定してかなり具体性を持って学ぶことができました。

また、実習では咬合診断を方法を学びました。患者さんの上下の歯型を採るのとセントリックバイトを採りそれを咬合器という人体の顎を表現するための装置に取り付けます。診断だけでなく、皆さんが入れたりする被せ物などもこのような機器を用いて作製します。

今回はこの状態から咬み合わせを見てどの歯の当たり方、形、位置がいいか悪いか見ていきます。

緑が咬み合わせの材料で、これを用いて上と下の模型の位置関係がわかります

装着後の状態

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。次回は最終回の記事となります。

 

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