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ダイレクトボンディングのセミナーを受けて

副院長の斉藤祐紀です。
3/31は休日返上でセミナーに参加しておりました。先月までの「咬合・補綴治療計画セミナー」がその一週前にあったのでなかなか休日が取れてません笑日々の学習、鍛錬が当院お越しの患者さんへ健康増進につなかればと思います。

今回はダイレクトボンディングという今の歯科業界では一般の方も耳にするようになっている言葉かもしれません。そのセミナーを受講しました。講師はSNSで多数のダイレクトボンディングの症例を掲載し、治療検討の患者さんもにならずそこ高度な技術から歯科医師をはじめとする医療従事者からも熱い支持を得ているみっきー先生(Xのアカウント)です。
ダイレクトボンディングとは本来なら間接法と言われる歯型を採ってそこから修復物を作製して患者さんの歯にセットするようなケースを直接(ダイレクト)法で接着操作(ボンディング)を行うことで歯を修復する方法です。
この治療法のメリットは歯を削る量を少なくできることです。先述の間接法は便宜形態といって修復物を作るためにある程度の大きさを伴う必要があるため余計に削る必要があります。しかしダイレクトでは虫歯で悪くなっている部分を削って基本的にはそこだけを詰めればそれで充分です。
もちろんある程度虫歯の範囲が大きくて中途半端にダイレクトを用いるよりはその場合にはさらに便宜的に削って被せ物にする方が予後は良くなる境界はあります。なので適応は見極める必要があります。つまり全てダイレクトで治せば良い、ということではないわけです。
また接着操作というのは歯とコンポジットレジンをボンディング材を用いて適切な操作を行うことで分子レベルの結合を行い、歯と修復物との間で非常に隙間が少なく修復でき、治療後の修復物との接合部で起きる2次カリエスのリスクが低くなります。

 

 

用いる材料はコンポジットレジンといい、質が低いものでかつ小さい範囲の虫歯への修復であれば保険でも認められていますが保険外ではより強度があり、接着への対応も良好です。これは歯の色に近い形で修復可能です。とはいえセラミックや金属よりは強度的には劣ります。
上記のメリットから現在では流行りの治療ともいえますし小さい虫歯の修復としてはかなり合理的な治療といえます。歴史的には東京医科歯科大学の田上順次元教授が在任中に開発された接着にシステムでそれが今や世界に広がる治療となっています。私自身も先日大学のその分野に所属する後輩に治療していいただきました。非常に良好な予後を得ています。まだ被せないで済むという安心が強いです。実際みっきー先生も被せるまでの最良の時間稼ぎと言えるとおっしゃってました。

東京医科歯科大学のう蝕制御学では私の時代の学生実習の段階(10年以上前)で銀歯などの間接法はあまり触れずひたすらにダイレクトボンディングの実習が行われてました。そういった意味では素養はそれなりに学んできたつもりですが、医療の水準の変化は日進月歩で10年経つとあらゆる常識が変わります。常に新しい技術にアンテナを張り随時学んでいく姿勢が重要となります。そういった意味で私は学生時代に学んだことをどんどん更新していく時期に来ていてここ数年は普段よりもさらに勉強する機会をとっています。

さて今回の実習では1級、2級のダイレクトボンディングを行いました。1級、2級というのは虫歯を取った後の歯に出来た穴の形の分類です。

 

 

2級というのは隣り合う歯に触れるところで出来た虫歯でここの治療を行う際、歯型を採って修復物を作ります。これが上記で述べた間接法です。治療回数がかかってしまうこともデメリットです。
それらを解決した方法がダイレクトボンディングです。ただダイレクトはペーストのようなものを敷き詰め固める作業となるため、この隣接面をうまく作るのが非常に難しいです。それには特殊な機器を用いて綺麗に充填していきます。
隙間なくかつ接着のシステムのため隙間が出来にくく、物性の優れる材料を用いることでそれなりに強度を出せます。

 

 

(保険でも簡易的な材料で隣接面を修復する場合がありますが、直接法では隙間が出来やすく、2次的な虫歯になりやすかったり、間接法でいく場合には前者よりは隙間は出来にくいですが材料的には脆いものを用いるためあまり長期では持たないことが多い)
加えて歯の形に対し細かく成形することができます。これは本多正明先生のセミナーでもあった咬合接触に関わるところにもリンクし長期安定のために非常に重要な作業となります。

 

 

 

上記のポイントをみっきー先生が普段臨床に用いる器具を紹介いただき実際に手に取ってそれらを用いて充填する実習を行いました。ポイントごとに細かくチェックしていただき、誤解は訂正、理解はより深まるといった密度の濃い実習を行えたかと思います。
セミナー後は懇親会も行われ、みっきー先生や受講生の先生方といろいろ情報交換ができ歯科医師人生においてはこういう場での話も非常に有意義になります。
今回の学びも通院いただく患者さんへ還元できればと思います。